[映画]しとやかな獣
昭和37年の正月映画。え、これが?
角川エンタテインメント (2005/09/23)
売り上げランキング: 1,924
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その縦横無尽なカメラ・アングルを駆使しての、悪党どもの絡み合いを堪能しよう。若尾文子は着物が似合うのに、
役者たちは公団住宅の一室からほとんど出ることはない。
その代わりにカメラが考えられるありとあらゆるアングルから室内を嘗め回すように捉える。役者は頭頂部から爪先まで使って芝居をする。なんてスタイリッシュ。脚本・新藤兼人はこれを現代能として書き下ろしたらしい。
そこに描かれるのは底なしの欲望と、ベッタリとへばりつく戦争の影。
作家(山茶花究)がセクシーダイナマイトな愛人(浜田ゆう子)に買い与えたはずの公団住宅になぜかその両親と弟、つまり一家で住み着いてしまう。
事業に失敗してばかりいる退役軍人の父親(伊藤雄之助)、芸能プロでの横領がばれて逃げ回るチンピラ息子(川畑愛光)。実は彼に金を貢がせている経理担当の女(若尾文子)の妖艶さはため息ものだが、何よりも凄いのは母親(山岡久乃)。育ちのいい奥様が平然とえげつないことを言うのには、もうゾクゾクしちゃうぞ。
どいつもこいつもひたすら俗物で強欲で自分のことしか考えちゃいない。欲と欲とのぶつかり合い、その台詞の応酬を堪能し、からから笑っているうちにだんだんと口の中が乾いていくような、そんな映画。特にマンションにお住まいの方はぜひご覧ください。足元の床が液状化されていくような、そんな錯覚が味わえるかも。
僕が最も愛する映画監督である鬼才・川島雄三。いままで『幕末太陽伝』しかDVD化されてなかったその作品が、なぜかここにきて続々と発売されてびっくり。
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