リアル文学部唯野教授
小谷野敦氏の「辞職顛末」(雑読すんの書評コーナー「書海への旅 航海記録」 - )
Wは私の本を罵り、僕、君の本なんかびりびりに破いて捨てちゃったもんね、高田衛も川村二郎も何も言わなかったでしょ。内容についての罵倒が続き、僕はね、君なんかが生まれる前から『八犬伝』読んでるんだからね。要するにこの男は、自分が関心のある対象について自分より若い者が本を出したことに嫉妬していただけだったのである。
斎藤は、こう言った。君が来るについちゃあ、比較文学ということで、どういう人が来るかみんな不安だったんだよ、地味な職場だからねえ、東京の私立じゃないんだから、タレントみたいになられちゃ困るんで、Fは甘ちゃんだから何言ったか知らないけどね。この発言には注釈が要るだろう。本を出すほかにも、私は『批評空間』という雑誌に評論を投稿して掲載されていた。斎藤にとっては、それが「タレント」への方向だと思われたらしい。この斎藤という老教授は当時一冊も著書がなく、別の教授はそのことをさして、本なんか出さないのが本当の学者だ、と言っていたらしい。F教授は、確かに私に、どんどん活躍してください、と言っていた。このF-斎藤は、同じシェイクスピア学者として犬猿の仲だったようだが、そういう派閥争いに私はいきなり巻き込まれたようだった。 少しWが落ちついた所で、P・HはWを「とても純粋な人だから」と言った。それはまるで、動機が純粋なら人殺しも許されるという右翼の論理のようだった。KSは、これはうちの鉄砲玉でね、と言った。それはまるでヤクザの言い方だった。そのうちWは私の隣へ飛んできて、君が憎くて言ってるんじゃないの、君を見てると自分を見てるようなんだよ、実るほど頭を下げる稲穂かなって言葉があるの、知らないでしょ、えっ、知ってる? そんな態度じゃねえ、ここでやっていけないよ。三年は黙ってるんだよ、三年たって助教授になったら何か言えばいいよ、そしたらみんな君の言うこと聞くよ。
ひぇ、こぇぇ。おもしれー。
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傑作である
「一般解」への終りなき度
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