アメリカン・スプレンダー
http://www.amesp.jp/
こういう低予算のいい映画がひょいっと出てくるところがアメリカの懐の深さか。
原作は米国で25年以上連載が続いているコミックス。冴えない中年男が自分の日常を描いてカルト的な人気があるという。
フィクションとドキュメンタリー映像の絡め方とか、アニメの使い方、自虐的な冴えないジャズ好きの中年ユダヤ男と来るとどうしてもウディ・アレンを連想してしまうが、この作品はアレンのようなスタイリッシュな洗練さよりも、ざらっとした手触りを残す。それでいて、構造は非常に複雑だ。
実在の人物が自らの生活を漫画化、すなわち虚構化する。
映画化というのはさらにもう一回虚構化する作業なわけだが、この映画という虚構の中に実在の人物が登場し、その人物が昔出演したテレビの映像も挿入され、映画の中の虚構存在である俳優たちと絡むのである。
観客は映画を楽しみながら、いつものように「これは実話を元にした映画とはいえ、映画だからキャラが誇張されているのだろうな」と無意識のうちに思う。そこに実在の人物が出演し、俳優の演技が決して極端な誇張ではなかったことに驚かされる。笑っちゃうくらいそっくりなのだ。
この辺りの構造は絶妙なチューニングがされていて、映画全体に奇妙なリアリティとしみじみとした哀しさ、可笑しさが溢れることになる。
とまあ、そんなことわざわざ考えなくても楽しめる、しみじみといい映画。観客はくつろぎながら芸達者な役者たちの芝居を楽しみ、笑ったりしんみりしたりしながら、人生についてのメッセージを映画から受け取ることができる。ささやかだけど輝きのあるメッセージを。
おすすめ。
↓これが原作。
ブルース・インターアクションズ (2004/07/17)
売り上げランキング: 453
通常2~3日以内に発送します。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 【この夏】テネイシャスD・イン・ザ・ピック・オブ・デスティニー【公開!】(2008.01.21)
- 茄子 スーツケースの渡り鳥(2007.11.28)
- [映画]ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007.11.25)
- ラグビーワールドカップ2007 日本対カナダ戦の中継で起こったこと(2007.09.26)
- 延友陽子はメガネのほうがいい。絶対。(2007.06.08)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
RCの"the TEARS OF a CLOWN"を思い出す人もいるでしょうね
投稿: きんたま | 2004.08.23 01:31 午前
ノシ
『ヒッピーに捧ぐ』が泣けるんだこのライブ。
DVD見てないけど。
『アメリカン・スプレンター』初代作画担当にして『チープ・スリル』ジャケット作画担当にして、自身がジャズミュージシャンでもあり、この映画の主役ハービー・ピーカーの親友であるアンダーグラウンド・コミックスの元祖ロバート・クラムさんでございます。
いや、よく知らないんだけど、かっこよさげ。
これから読んでみようかと。
http://forum.nifty.com/fbeats/beaters/crumb/fritz_the_cat.htm
投稿: さいもん | 2004.08.23 03:09 午前
ちなみにこの映画はきんたまさんが「スチームボーイつまんねえ」といっていたので予定変更して観に行ったのです。アタリでございました。ありがとうございました。
スチームボーイは観ていないから評価できないけど。
投稿: さいもん | 2004.08.23 03:11 午前
調べるといろいろ出てくる。
こんな映画も合ったらしい。
http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=54712
投稿: さいもん | 2004.08.23 03:22 午前