スクール・オブ・ロック
全米公開時からずっと待っていたこの映画、ヤマハホールで試写会を観てきた。
実にまあ、あきれるほどシンプルな筋立てある。
ロックバンドをクビになった男が、有名私立小学校のニセ教師として優等生の生徒たちにロックを教える。やがて生徒たちはロックの楽しさに目覚め才能を開花させ、音楽とチームワークを通じて、それまでの学校生活では望めなかった感動を得る。ニセ教師自身も彼らとのふれあいの中で、自らの人間性を回復していく。
しかしついに正体がばれてしまい、せっかくのライブを前にしてバンドは挫折…。
これだけ、お話はほとんどこれだけなのだ。
しかしこれが、絶妙に面白い。
この映画の成功のポイントは二つある。
ひとつはドラマを極限まで省略し切っていることである。
親の厳しいしつけに萎縮する少年、太りすぎて引っ込み思案の少女、ぱっとしないキャラでもてない少年、そして金持ちで教育熱心な父兄からのプレッシャーに抑圧される女性の校長先生…。
ニセ教師の破天荒な活躍によって、彼らが人生に輝きを取り戻す過程は、普通の映画ではじっくり腰を据えて描写されるはずだ。ネタとしておいしい、盛り上がるところだからである。
ところがこの映画では、これが実にさらっと、驚くほど淡白に示される。ストーリーが破綻しないぎりぎりのところまで、エピソードの細部は切り捨てられている。そのため映画の途中におけるクライマックスも少ない。
にもかかわらず、その淡白なエピソードがそれぞれの役のキャラクターにしっかりと還元され、映画は前へ前へと快調に進むのだ
ひとことで言うと臭くない、しつこくない、軽快なのだ。これは主に脚本(マイク・ホワイト)の勝利だと思われるが、カメラワークも秀逸。
もう一つのポイントは、いうまでもなく主演のジャック・ブラック。
もー本当に凄いです。当世一代の芸達者。
静と動(もっぱら動だけど)、上品と下品(もっぱら下品だけど)、シリアスとコメディ、かっちょわるくてかっちょいい、表情は百面相、声域は幅広く、ギターも達者、そして抜群のリズム感。シンプルな脚本の中で生きる魅力的な素材だ。
他のキャストも役柄にピタッとはまっていて無駄がない。
厳しい校長先生のジョーン・キューザック、ロックを諦めて恋人との生活を選ぼうとする同居人のマイク・ホワイト(あれ!)そして子役たち。他の「子ども主役映画」のように天才子役がいるわけではないが、その分「子どもの癖に妙にうまい芝居」が鼻につくこともない。
それぞれが、この映画のもつビート感にしっかり乗った演技を見せる。
余計な技巧や装飾をカットし、しっかりビートをグルーヴさせて、リードボーカルとリードギターが暴れまくる。そしてスカッと終わる(エンディングが、ある意味凄いのだ、もちろん書けないけど)。
この映画はロックだ!この映画の構造自体が、まさしくロックなのだ。
いまどき殺し合いもドラッグもラブシーンもCGも出てこない、それどころか暴力も恋愛すらもほとんどない、シンプル極まりない音楽コメディ映画の傑作である。
Webサイトもこの映画に対する愛情が感じられ好感がもてる。
是非ご覧頂きたい。
ほら、そこのあなた、前売り券を買いに行かないと。
※あのオープニングは、ジャック・ブラックの出世作『ハイ・フィディリティ』へのリスペクトでしょうかね。
※サントラ買っちゃおうかなー。
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スクール・オブ・ロック来日会見 - [映画]All About Japan
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コメント
昨日観ました。いやほんとに、ここまで面白いとは思いませんでしたね。私もお勧めです!
投稿: Pina Hirano | 2004.05.03 06:44 午後
Pina Hiranoさんはじめまして。
僕ももう一回映画館で見たくなりました。
校長先生踊ってほしかったですね!!確かに!!
投稿: さいもん | 2004.05.03 07:51 午後